恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第6章 近くて遠い未来を思う / 🔥
「これだけ?」
「あまり煽るな」
「今日は単独任務だから、他に隊士はいないの。だから……」
私は彼の両頬をそっと包む。滑らかなさわり心地だ。
「今夜はあなたともっと一緒にいたい」
「七瀬、煽るな……言っているだろう」
杏寿郎が口元に笑みを浮かべながら、私の唇を親指でそっとなぞる。そして目の前に影が差した、と思うと彼が2度目の口付けをくれた。
お互いの顔がゆっくり離れると、私ははやる気持ちを抑えながら恋人にこう伝える。
「ねえ、杏寿郎。私もあなたと同じ色にしてみたよ」
橙色の爪紅を塗った両手を見せると、杏寿郎は大きな目を少し見開いた。
「こうしたら、あなたといつも一緒にいれる気がして。それにね」
「なんだ?」
「橙色は元々、凄く好きな色なの」
「また可愛い事を言ってくれる……君に良く似合っているぞ」
そう言うと、私の両手を愛おしそうに自分の両手で包んでくれた。
「杏寿郎の爪はやっぱり綺麗な色だね」
鬼の彼は太陽の光を浴びる事が出来ないけど、長い橙色の爪は太陽みたいにキラキラと輝いて、そこから明るい光を放っている。
私は橙色の太陽にそっと口付けを落とした。