恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第25章 俺の名前は…… / 🔥
「いえ、あの…俺は桐谷です。吉沢じゃありません」
「む!そうだったか!すまんな!」
はっはっはと豪快に笑う炎柱。
炎柱。
再度言うが、彼はとても感じが良い。
良いのだが、人の名前をよく間違えてしまう。
これは俺だけではなく、他の隊士も一緒だ。ちなみに彼が呼び間違えた”吉沢”は俺の一期上の先輩。
つい先日、その吉沢さんから「炎柱にお前と間違えられた」と聞いたばかり。まさかそれと同じ事が俺にも降りかかるとは……。
「そろそろ行くか」
「はい」
俺達は支払いを済ますと、共に食堂を出た。
「この先に微かだが、鬼がいた気配が残っている」
「俺も気になっていました」
「うむ!急ごう」
炎柱が一歩前に出た。
—— 次の瞬間
バサッ…と燃える炎の羽織りが俺の目の前で舞い上がった。
その羽織りの下には”滅”の一文字。
鬼殺隊の全隊士の隊服に刻まれている。
『入隊した経緯は皆それぞれだが、背中に背負っているものは全員同じ』
『鬼を滅する志だ』
以前、彼がそう言っていたのを思い出した。