恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第24章 唇に甘い罠〜彼目線〜 / 🔥✳︎✳︎
「なかなか逃げ足が速かったが……」
手首を掴んでない方の手で左頬をふわりと包む、と同時に彼女の耳の下にスッ……と手を差し込んだ。
「ようやく捕まえた」
ぱっちりと綺麗な形をした二重の瞳が俺を不安そうな様子で見ている。卵型の小さな顔に形の良い鼻、そしてかわいらしく、魅力的な唇…と先程一瞬だけ確認した顔立ちはやはり自分好みだった。
どれ、1つ試してみよう。
「血鬼術—— 」
「夢幻の口火(むげんのくちび)」
彼女がギュッと思いきり目をつぶる。
その仕草がとてもかわいいと思った。気分が良いまま、俺は自分の唇を彼女の唇にそっと当てる。
そうして熱を持った牙でそこを掠め取れば、甘い蜜のような血がじわっと滲む。なるほど、血まで俺の好みか…
「何でこんな事……」
戸惑う君に俺はこう言った。
「君にこうしたくなったから」
顔を逸らしたいのだろうな。だが俺が頬を固定した為、そのまま大人しく口付けを受け入れてくれる。
これは甘い……そして満たされる血だ。
唇を離すと、彼女は解放された安心感からふうっと息を吐く。
俺は口元に笑みを浮かべながら静かに待っていると、大きな両目がゆっくりと開かれた。