恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第24章 唇に甘い罠〜彼目線〜 / 🔥✳︎✳︎
鬼は丑寅の方角より現れると言う。
背が高く、器量も良く、鮮やかな金色の髪の鬼が1人。
その鬼の名は杏寿郎……12鬼月で上弦の参。
橙色の爪がきらりと光っている。
逃げ足が速い鬼狩りだ。俺は先程森の中で遭遇した少女を追いかけている。
黒い隊服の上に淡黄蘗(うすきはだ ※1)の羽織。髪の長さは丁度肩につくかつかないか、と言った長さ。
先程一瞬だけ顔立ちを確認したが………
「そろそろ観念したらどうだ?」
雷の呼吸という速さが重視されるであろう型を放ちながら、彼女は必死に逃げている。
「君は俺から逃げれないぞ」
連続で使用した為か、疲れて来た様子だ。俺との距離が大分縮まった。よし、ここで一気に間合いを詰めるか。
グン、と更に速度を上げて一瞬で彼女の目の前まで近づいた。
「雷の呼吸——」
——— 打たせるものか。
型を放たれる前に、俺は自分の長く尖った爪で彼女の刀をガキィン……と弾くと、細い右手首を掴む。
そうして、近くの木にトン……と柔らかく押しつけた後は、そのまま彼女の右手に自分の左手を絡めた。
小さい手だな……
『逃げなければ』
今にもそう言わんとせんばかりの表情で俺をみる彼女。
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※1…明るく淡い黄色