第24章 唇に甘い罠〜彼目線〜 / 🔥✳︎✳︎
「甘美な血だな。では…こうするとどうなる?」
「……何……」
ん?何か言いかけたな……まあ良いとしよう。
俺は目の前の唇に、紅をさす要領で自分の親指を使い、彼女の唇に付着している血をゆっくりゆっくり伸ばしていく。
「うむ。良い色になった」
そして次に彼女の血がついた親指を、自分の唇にも塗っていった。
「これで君と揃いだな……とても綺麗な唇だ」
掌を再び彼女の左頬に当て、柔らかく包む。
赤くなった自分の唇を同じく、赤くなっている彼女の唇にゆっくりと押しつけた。
「んぅ……」
「……はっ……」
2つの紅が1つに重なり、ゆっくりと混ざっていく。
水音を出しながら啄み、舌を絡め、そして包んでいる左頬を優しく撫でる。きめ細かく触り心地が良い。
「あっ……」
彼女がかわいく、甘い声を出す。
「滑らかな肌だ……唇も甘い……」
これはもう離せないな……。
そのまま口付けを続けていると、彼女の喉がゴクンと動いた。血を飲み込んだらしい。
彼女の顔がだんだんとぼうっとして来た。術が浸透し始めたようだ。
「俺は上弦の参、名を杏寿郎。鬼狩りの少女よ。君の名は何と言う?」
……………教えてくれ。君の名前を……
end.