恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第23章 秋 in 恋愛 / 🌊
〜義勇から見た景色〜
ある日の昼休み。
俺は昼食にいつも食べているぶどうパン、竈門ベーカリーのパンをいくつか手に持ち、階段の踊り場に向かっていた。
ん……先客か。踵を返そうと思い、くるっと進路を変えたが、小枝を踏んでしまった。パキッとその音が俺の足元で響く。
そこに座っていた人物がはっとした顔で、こちらを見る。
沢渡先生が俺がいつも座る場所にいた。
目が真っ赤だ。どうやら泣いている所に出くわしたらしい。
「すまない、もう行く」
俺は再び踵を返して、そこから立ち去ろうとすると………
ぐ〜〜〜〜〜と間抜けな音が響く。咄嗟にお腹を押さえる彼女。
「すみません、私が立ち去ります!」
両目の涙を拭いながら、彼女が立ち上がる。
「今日は買いすぎてしまって、俺1人では食べれそうもない。先生も食べないか?」
ついそう言ってしまった。
買いすぎた、と言うのは本当だが、何故こんな事が口から出てしまったのだろう……。
「良いのですか?」
俺を見る真っ直ぐな目。その瞳は涙で赤くなっている。
“綺麗だな”
それは俺の正直な気持ちだった。
「ああ、竈門ベーカリーのパンはどれも絶品なんだ。先生が良ければ」
「はい……ではお言葉に甘えて」
そう恥ずかしそうに笑った彼女は、やはり綺麗だった。