第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴
「髪は…完全に乾いていますね。では師範塗っていきます」
「俺、人の髪にこうやって触れるの初めてです! 楽しみです」
「(何故俺はこんな事をしてもらっているのだろうか)」
先程玄関まで出迎えた継子二人がどう言うわけか、自分の髪に買って来た椿油を塗りたいと提案して来た。
聞けば義勇の髪をまとまりやすくする為に…そんな理由かららしい。
「良い匂いですね。これだけで癒されます…私も今度自分用に買いに行こうかな」
「七瀬、これで大丈夫か? 椿油に触るのも初めてで…」
「(悪くない。むしろこれは…)」
七瀬は右側から、炭治郎は左側からそれぞれ椿油を義勇の髪に塗っており、二人になすがままにされている水柱は両目を瞑って心地よさそうだ。
前夜の任務の疲れと先程の湯浴み。二つの相乗効果で時おりうつらうつらと右に左に揺れる義勇だが、七瀬の「終わりました」の言葉を意識が遠のきそうになっていた頭で、何とか捕らえる。
「義勇さん、どうでしたか?」
左を向くと問いかけて来た炭治郎がやや不安そうな面持ちで、そこにいる。
「師範、何も言わなくなったから大丈夫かなって心配していたんですけど…」
右を向くとこれまた炭治郎と同じように、少し不安そうな表情で問いかける七瀬がいた。
「…人に髪を触ってもらったのは初めてだった」
「そうなのですね!」
「俺が見る限りは何かこう…髪がツルツルーってして、ピカピカーって感じです」
「…」
炭治郎の言葉を受け、義勇は毛先を数箇所指で触ってみた。
普段頑固な髪だと自負しているそこは、つるつると。そしてやや光って見える。
「たまにで構わない。またやってくれ」
「え…」
「はい!! わかりました、義勇さん! もちろんです」