第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴
彼女の言う通り、炭治郎との一戦で継子の話は帳消しにしようと考えている水柱。
「お願いします! 俺は義勇さんから指導を受けて、水の呼吸の精度をもっともっと上げて…鬼殺の為に出来る事を増やしたいんです!」
炭治郎の双眸に向上心がキラキラと光り輝いている。
ちらりとその横に視線を移せば、いつの間にか木刀を両手に握った七瀬が決意を秘めた瞳で義勇を見つめていた。
「承知した」
水柱の口から了承の言葉が出る。
自然で迷いがない返答だった。七瀬はほうと感心したのも束の間、すぐに意識を切り替える。
「あの、何度もすみません!作戦会議をさせて下さい」
「…..」
義勇が無言で木刀を下ろす仕草を見た七瀬は、炭治郎に素早く駆け寄り ———
「どうしても水柱の継子になりたいんだよね?」
「ああ、そうだ!」
「わかった、私に考えがあるんだけど…」
二人は顔を近づけ、出来る限りの小さな声で話している。その様子を静かに観ている水柱。
どういった手段で攻撃を仕掛けて来るのか。
僅かな時間の中、様々な予測を立てる義勇は精神を集中させていく。
「もう大丈夫です!」
「俺もいけます…!」
「…始めるぞ」
義勇が言葉を発した瞬間、彼の纏う空気がスッと静かではあるが、変化を見せた。
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「うっ…!」
「いっ、た…!」
カン、カン、と二回木刀同士が触れた音が庭に響く。これはいずれも七瀬と炭治郎が義勇に得物を弾かれた為である。
「(上官らしくないって思ったけど、やっぱりこの人間違いなく柱だ…!)」
「(凄い! さすが義勇さんだ!)」
攻撃をたやすく水柱にかわされた二人。それぞれが殆ど同じ感想を胸の中に抱いていた。
「(以前任務で見た時よりも沢渡の速さが増している…今のは様子見で仕掛けて来たのだろうが、この後はどんな立ち回りをするか——)」
流れる動作で木刀を振った後は、中段に得物を構える義勇。
「(炭治郎がヒノカミ神楽を使い始めると、厄介だ。単発ならかわせるかもしれないが、連撃となると——-)」