第4章 不協和音の奥に眠る愛
美玲は案内した少女に導かれ、少し薄暗い部屋にたどり着いた。
「御館様。有栖川様を お連れしました。」
「ひまり。有り難う。下がってよい。」
「はい。
有栖川様。話が済みましたらまたご案内させていただきます。」
「はい。よろしくお願いします」
「失礼します。」
そういって、少女は去っていった。
「美玲。入りなさい。」
「はい。失礼いたしまする。」
部屋は昼過ぎにしては薄暗く、行灯の光が部屋の奥で室内を淡い暖色に染めていた。
その部屋の上座に、産屋敷俊哉が、姿勢をただしたまま美玲を見ていた。
美玲は当主の前に着座し、頭を垂れる。
「本日は、呼び立てに応じてくれたこと、礼を言うぞ。」
「いえ、まだ新参者であるにも関わらず、御屋敷に御招待いただきまして、恐悦至極に存じまする。」
「楽にしておくれ。余は窮屈だ。個人で話す時まで畏まらずともよい。」
「はい…。」
言われた通りに頭を上げると、腐食し爛れたような痣に慈愛の目で己を見ている白眼と目があった。
「美玲。呼び立てたのは巌勝のことで話があってな。
彼は、入隊から異様な感じを漂わせる。
容姿も、佇まいも美しく、剣術の方も弟の縁壱には大分劣るが、それでも隊の中では2番目に実力があるとされているのだいるのだ。
だが、なにかがないと思えば、心がそこになく囚われようなものを感じる。
その事でだろうか……他の隊士とも揉め事があったという報告をよく聞く。」
眉尻を下げ、物鬱気に話す様子から巌勝のその様を憂いていると悟った。
しかし、美玲が今までに見てきた巌勝の様子は無愛想で、口数が少ない以外に特に問題を感じていなかった。
目の前の当主が口にする彼の様子に、少し驚いていた。