第4章 不協和音の奥に眠る愛
「全集中常中を極めればその先にたどり着くものです。
責任をもって導きます。」
「はい。よろしくお願いします。」
目隠しをし、軽々抱き抱えられると、
「それでは、舌を噛まぬようお気をつけください。」
と縁壱の声を聞くと、またもや驚く程の速さで走り出した。
最初こそ速さについていけない鼓膜も馴れてくると、深く我を消して縁壱の状態を観察する。
(おぉ、これは!感覚神経、体で感じることに長けておられる。)
縁壱はそう思いなから、美玲の勉強熱心さに感心していた。
(凄い!こんなにも速い鼓動に深い呼吸!体温は巌勝師範以上に高い!
どこにも隙がないなんて、本当に巷の武人ではとてもお目にかかれないわ!
思考する隙もないくらい、使われる場所が洗練されている。)
美玲は、気分が高揚するのを何とか鎮めて、感じることに集中した。
ふたりの後に続いて走る巌勝は、縁壱が自分が連れてきた新弟子にかなり興味を抱いていることを感じとりながらも、無心であることに努めて走り続けた。