第4章 不協和音の奥に眠る愛
そして、お迎えに上がった時、屋敷で待っておられた女性は稀に見ぬ上背で朗らかな方でした。
白地の花柄の着物に紺の袴。瞳の色は私と兄上と同じ色。髪の長さも同じで赤黒い色合いに親近感を感じたのです。
道場の者が大勢 彼女を見送ろうと集まり、皆が彼女を慕っている様子見て、思わず笑みが漏れました。
皆が家族の様で暖かいその様子に彼女の人と成りを感じて、この者の師範になれることを嬉しく思ったのです。
そしてどこか、この者が、私たちのどこかギクシャクした噛み合わない歯車を合わせてくれるようなそんな気すらした………。
このところの兄上の大きな変化は、日は浅いく確実なものではないかもしれない。
"兄上に抱えさせてしまった大きな闇"をも溶かすやも知れぬその穏やかな笑みが、私の心に希望をもたらせてくれたのです。
少々動機が他力本願なところもありますが
彼女は大事に育てていかなければなりません。
そう思ったのでした。
御館様の御前でも、女性らしい美しい所作で在りながら勇ましく凛々しい振る舞い。
重圧が異常に高いあの場に気後れせず態度も平静さも失わない。
流石は噂されていた人望の持ち主である。
これからの稽古が楽しみなのでございます。