第4章 不協和音の奥に眠る愛
「本来は有栖川美玲と、継国巌勝・縁壱の3人で集まってもらうつもりだったのだ。
それが、鬼殺隊始まって以来の初めての女性の志願者であり、その者が有栖川家の御息女ということもあり、こうして集まった。
中には女性隊士に対して良く思わぬ者もいるだろう。
反対の声を上げるために来た者の方が多かろう。
現にその声は今も囁かれるが、今の世では仕方あるまい。
だが、余は、女子、男子問わず、鬼のおらぬ世を築く志を強く持ち、邁進、精進致す者は、いかなる身分も、歳も、男女も問わず受け入れたい、共に戦いたいと思って居る。
ここに集まる者に、わたしの心を汲んで欲しい。」
皆の者の前で深く頭を下げる。
「御館様!!頭をお上げください!!」
「女を隊に加えるなど、いくらご尊敬申し上げる御館様でも、賛成しかねる!!」
「男ばかりのところに女などと、風紀を乱すばかりだ!!」
と柱の面々から産屋敷俊哉に向けて声が上がる一方、まだ納得がいかない者も多くの声を上げ場は騒然となった。
「御館様の御前であるぞ!!」
と巌勝が太く低い声を上げると、ぴしゃりと静寂にもどる。
しかし、そこにはまだ根深く重い空気が漂っている。
「美玲。この戦国の世、この国においても、女の侍というものは数も稀で、肩身も狭かろう。
其方は強く優しい竹のようにしなやかな心を持っておる。
そしてその実力も、その精神にも余は期待しておるのだ。
実力と成果で皆の者に示せ。
其方なら成せること。
よいな。」
穏やかに笑みを浮かべたまま、美玲をみやり激励の言葉をかけた。
「はい!!必ずやご期待に応えられる成果を上げ、立派な隊士になる事をここにお誓い申し上げます!!」
二人の師範と鬼殺当主の期待が重くのしかかり、一方では後ろでは己への罵声とも思しき声も上がる異様な場に美玲は手汗を握り、額に汗がにじむ緊張感で押しつぶされそうになる。
しかし、己の生家でも、女が剣を握る事などあってはならぬと声を荒げていた門下生も、己の剣の心と情熱、成長と成果があって、最後は皆に送り出されてここへ来たのだ。
同じことを繰り返し、ただ邁進するのみと己に言い聞かせた。
産屋敷俊哉はゆっくりとその言葉に頷いた。