第4章 不協和音の奥に眠る愛
眼前に近づく気配は今まで感じたことのないほどに穏やかなのに尊大で、心が洗われ淀みを感じさせない程に清い。
立ち止まった音と共に一瞬の沈黙が訪れる。
なんて心地よくも尊い.....お会いしたこともないけど、まるで御門がそこにおわすかの様だと美玲は思った。
「皆の者。よくぞ集まってくれた。
皆の顔をこうして拝めることが出来て余は嬉しく思うぞ.....。」
その存在感を高めるような凛とした声が川のせせらぎのように穏やかで、美玲の心の中を温かく包まれる感じがした。
(あぁ。なんて心地よい.....。この方が、鬼殺隊の統領。
こんな素晴らしい方にお会いした事は今までにないわ.....。)
「御館様におかれましてもご壮健でなによりでございまする。益々のご多幸を切にお祈り申し上げまする。」
柱筆頭である継国縁壱の声が響く。
「礼を申すぞ。縁壱.....。皆の者面を上げよ。」
サッと一斉に視線が当主に注がれる。
そしてそのご尊顔は目の下まで紫の痣で覆われて色素が薄い瞳から視力が弱い事を悟った。歳は大差ないのにもかかわらず、ただならぬ洗練された雰囲気に息をのんだ。
「其方が現有栖川家当主”有栖川美玲であるな。
余は産屋敷俊哉と申す。かねてより有栖川家は藩剣術指南役やその他の役職、剣術の腕などから注目していた。
今回の3人の犠牲は余も巌勝も残念に思っている。心よりお悔やみ申す。
そして、こうして鬼殺隊に入る決断をして余の前に現れてくれたこと、心より礼を申すぞ。」
「勿体なきお言葉。こうして鬼殺隊の道に入れましたことも、わたしを弟子としてくださった継国巌勝様そして、縁壱様との出会いがあればこそ。
二人もの最高の師範に出会い、こちらにご招待いただき恐悦至極にございまする。」
産屋敷俊哉は美玲の言葉を聞くとふわりと笑みを浮かべた。