第4章 不協和音の奥に眠る愛
「こちらが、鬼殺隊の方で用意した有栖川殿の屋敷でございます。」
縁壱が、美玲たちに指し示した建物は
二人の新しい住まいとして提供された屋敷。
4人で門を潜った。
柱を引退された方が使っていたらしく、大きな藤と松が庭を彩り白い砂利に白木の柱が美しい屋敷だった。
隣を歩く孝太郎は目を輝かせてキョロキョロと見渡している。
その様子をほほえましく横目で見ながら玄関の戸をあけた。
「りの殿。屋敷の主を連れて参った。」
「はい。お待ちしておりました。」
使用人は一人。住み込みの専属である。
名を”りの”といい、齢45程の制服であろう黒の着物が似合わないこじんまりとした可愛らしい女性だった。
「今日から世話になります。よろしく頼みます。」
「有栖川美玲様。お待ちいたしておりました。りのと申します。末永いお付き合いよろしくお願い致します。」
美玲が声をかけると、頬を染めてにこやかに返事をし頭を下げてくれた。
使用人は基本早朝から夕刻を迎える前までの時間帯で家の事をするが、この者に関しては孝太郎の面倒も見ることを了承した住み込みの契約である。
「有栖川殿。我らの屋敷はどちらもこちらから近い。
また、謁見の日に御案内しましょう。
それまで有意義にお過ごしくだされ。我々は任務や稽古が立て込んで力になってやれませぬ。
悪いが、これにて失礼いたします。」
「お迎え、御案内戴きまして有難うございます。
お気をつけて。」
二人の師範は去っていった。
その姿を見送ったあと、りのはにこやかに話しかけてきた。
「女性の隊士様でわたしは運がようございます!!こんなにかわいらしい坊ちゃまのお世話も出来るのですから。
むさ苦しい男どもにはもうこりごりで.....。」
と毒を吐いた。
思わず美玲は吹き出し
「りのさんは面白いお方ですね。気が和らぎます。仲良く致しましょう。沢山お話を聞かせてください。」
「嬉しゅうございます。ご相談事も何なりとお申し付けください。」
りののその朗らかで明るい様子は、まだ、みんなが元気で幸せだった頃の母の様子と重なる。
少しだけ胸が締め付けられた気がした。