第4章 不協和音の奥に眠る愛
門下生が別れの言葉を叫んだ。
「師範!!頑張れ!!」
「師範!!いつまでも待ってます!!」
「兄弟のご武人!!俺たちの師範、よろしくお願いします!!」
沢山の声が美玲の背中を押す。
そしてまた、その声が一つに合わさり手拍子とともに美玲の名を呼ぶ。
美玲は振り返り、涙をためた笑顔で大きく手を振った。
「みんな!ありがとう!!今まで有難う!!行ってきます!!」
そして、桜が叫んだ。
「姉上!!わたしはいつも勝手で真っ直ぐ進んでしまう姉上を絶対許しませぬ!
生きて帰らねば祟ってでも、生き返らせて、わたしに恨まれてください。
姉上がいなければ、わたしはわたしではありませぬ。
必ずや、戻ってきてください!!」
桜は泣いていた。
美玲は桜らしい言葉に涙した。
「戻ってきます。元気でいるのですよ。」
本当は恨んでいるのではない。
自分の事を羨ましく思い、好いてくれていること、素直ではない事をいちばんよくしっているから、最後に言葉をかけてくれたのが嬉しかった。
「フッ。……茶番だ。」
巌勝はそう言いながらもその目は優しく表情は綻んでおり、
「兄上!」
と、嗜める縁壱に、また心が軽くなる。
今度こそ、4人は前を向いて歩みを進め、有栖川邸を後にした。
「有栖川殿は皆に好かれておられる。いい継子に出会ったやもしれませぬな。」
縁壱は小さく微笑んだ。