第4章 不協和音の奥に眠る愛
それからも慌ただしく、明海と美玲主導で家の事を済ませた。
道場と父が担っていたお役目は、門下生の師範格の男に引き継ぎ、道場も同じく信用の置けるものに頼んだ。
いざ、美玲が帰ってきた時に揉め事が起きぬよう、そこは、藩主が取り持つことで話が落ち着く。
そして、3人の法要が無事事を納め
その直後、門下生が道場に集められた。
上座の中央に美玲と、左に師範代理、右に孝太郎が並ぶ。
「この度は、法要にお集まりいただき感謝申し上げます。
突然3人の家族が失われ、わたしは己の非力さを憎み、さらに剣技を高めるべく暫くの間、この道場を離れます。」
道場内はざわついた。
まだ話を聞いていない者も噂だけ聞いていた者も、今後の事を思うと不安が強いゆえにだ。
「わたしと孝太郎は助けてくださった団体のところに10年の期間修行して参ります。
その間は、横におります師範代理2名にこの道場を任せ藩の管轄下に置くことに相成りました。」
「父の最後に残した言葉です。
"天は万物において1つとして同じものは作らず
1つとして優劣をつけない"
人は神が母に宿し産み出されたもの。全てが唯一無二の必要な存在だからこそ生きている。
ここにいらっしゃる門下生皆様が一人一人唯一無二の存在であることを忘れず、己の心と常に向き合い精進されることを望みます。
そして皆さま方のご活躍とご多幸を切に願います。」
そう言って頭を再度下げると、
門下生の一人が声をあげた。
「美玲師範が頑張っておられるのは承知しちょる!
なぁに、美玲師範はこれから頑張っていかれるところが変わるのみ。
我々も負けじと見習ろうて頑張らねばいかん!のう、みんな!!」
その男に便乗するようにそうだそうだとの声が上がった。
「美玲師範に追い付くと思っておるとまた突き放される。おいたちも、負けじと頑張ろうぞ!」
もう一人の男がそう叫んだ!
「そうだ!美玲様と景勝様のためにこの道場をみんなで守っていこう!!」
「「「おぉぉぉぉぉおおお!!」」」
若い門下生を中心に雄叫びが上がる。
美玲の心身は歓喜と感謝で満ちて涙となって溢れる。
堪えきれずに涙し、左手を口にあてがい、声を堪えた。