第1章 序章 女が剣を握る理由
「しはーん!!」
「美玲しゃまー!!」
「美玲さまー!!」
「こら!孝太郎、誠太郎、桜太郎!しっかり挨拶なさい!」
元気な声が聞こえてきた。
幸伸の子どもたちとその妻・咲枝である。
「騒がしいのが4人も……ほんと、すまん……。」
「美玲さん、いつも子どもが申し訳ございません……。」
そういって親二人で美玲に対して頭を下げるが、むしろ頭を下げる方は自分だと思っていた。
「子どもが小さいうちは元気が一番ですよ!3人ともなついてくださって嬉しゅうございます!」
「いつか、美玲のような立派な侍の剣士にならなくてはな。
でなければ、おまえの後を継がせられん。」
幸伸は子ども頭を撫でながら彼らにも言い聞かせるように言う。
「父上!わたしは、師範に習って日本一の侍になりまする!
長男の孝太郎は勢いよく手を上げてそう答えた。」
「あぁ。美玲は強いぞ!男さえもこの町や周辺の町に住まう侍は皆が美玲に及ばんのだ。
私の自慢の妹だ!ハッハッハ。」
普通の侍の家庭では長男が、弟よりも女兄弟よりも弱かったら、そのものに嫉妬するものだが幸伸は、父に才を認めて伸ばせてもらったことで、自他を認める、受け入れることができていた。
楽しそうに笑う幸伸の子達も、笑顔が耐えないのは自分がしてもらったように育っているからだろうと女二人は確信していた。
「おやおや、幸伸、咲枝さん、かわいい坊や達もよくきてくださいましたね……
相変わらずあなた達は仲のよろしい兄妹で、母は幸せです。」
「「母上!」」
嬉しそうに駆け寄ってきた母・明海が小さな子ども達を抱き締めてそう言った。
向こうからは、稽古で一汗かいてきた景勝が手拭いで拭きながら笑みを浮かべてやってくる。
「父上!ただいま戻りました。息災で嬉しゅうございます。
本日も子ども達をよろしくお願いします!」
「よく帰ってきた。しっかり稽古をつけてやろう。」
「「「よろしくお願いします!」」」
3人の子ども達は勢いよく頭を下げる。
景勝は笑みを浮かべ
「あぁ。しっかりついてこい。」
と声をかけた。