第3章 月詠の天下り
3人が話している最中に駆けつけた侍が、一人が逃げた3人を呼びに行き、一人が泣きじゃくる桜太郎を抱えてあやし続けた。
ずっと母上、母上と声を漏らしながら……。
暫くすると、3人が戻り惨状を見て、明海は崩れ落ちるようにその場に膝をつき呆然としていた。
二人の幼児が母の亡骸にしがみついて泣いた。
それぞれが、愛した家族の死に涙した。
美玲が巌勝の隣を静かに去り母の元へ向かう。
「母上……。父上も…咲枝さんも、守れませんでした。
申し訳ございませぬ。」
明海は首を振ることしかできなかった。
孝太郎が、桜太郎を抱き締める。
「辛い思いをさせた」
と子どもながらに弟を労った。
その様子を見て、巌勝も立ち上がった。
「……今日のところこれにて失礼する。美玲殿………
またここを訪ねる。10日後改めて話をしよう。」
名前を始めて呼ばれたことに目を見開いた。
「畏まりました。本日は、駆けつけていただき有り難う御座いました。」
「二人の冥福を……切に願う……。」
継国巌勝
背を向けたその男の背に向かって、美玲は深々と頭を下げた。