第3章 月詠の天下り
「お願いします…………鬼狩り様……!わたしは家族を守れぬ未熟者………悔しゅうございます。
女でありながら力を持ってしまったわたしには……
もはやその道を極めて参るしか術がないのでございます……!
鬼を斬れるようになりたい!
鬼のような未知な驚異に苦しむ人が増えるのは嫌にございまする!」
女にとって、人助けとはなんだろうか。
この家族は誰もが皆、お互いが深いもので結ばれている。
兄も出来すぎた妹を疎まない
父は両方の子をそれぞれ愛する
それぞれが私の心を強く揺さぶる言葉をかけてくる。
そうだ取り引きだ。
この私と女との………
「わかった。御当主。立派な剣士に育てよう。我が弟と……共に………。」
だだ、この曇りなき澄んだ心に己の濁った剣だけを教えるのには忍びない……。
疎んで憧れる、でも届かない………
あやつの剣技を見せてやりたいと思ったのだ。
どんな反応をするか、
その反応次第だ。
私を驚かせるのか、失望させるのか……
お前に剣を教える代わりに
私の闇の払方を教えろ
これは"取り引き"なのだ。
「"天は万物において1つとして同じものは作らず
1つとして優劣をつけない"
人は神が母に宿し産み出されたもの。全てが唯一無二の必要な存在だからこそ生きている。
神から賜りし物に勝手に優劣をつけているのは我々人間だ……。
己を貫き生き続けよ。
美玲先に幸伸に会ってくる……。明海と幸伸の子を気にかけてやってくれ………。」
娘に言い聞かせると同じく私自身にもいっているような、曖昧な線引きのある言葉だからか、
その言葉も深く己の心に入ってくる。
大した男だ……ごうごうと照りつける太陽を一身に浴びて大きくうねる大海の如し。
惜しい男を助けられなかった。
「父上………必ず立派な剣士となりここに戻ります…!」
「幸せにな………。」
武人、有栖川景勝は息を引き取った。