第1章 出会いと別れ
『「ただいま〜」』
「あ、姉貴!優!おかえり」
『優の布団を準備して、それに桶に水を張って、それと手ぬぐいと湯呑みを。それとこれ、優の薬。私は熊を捌いてくるから優を寝かせて薬を飲ませて。あ、造血薬は必要な時以外必要ないって。今日はもう飲ませてあるみたいだよ。』
「わかった。やっとく」
『お願いね。』
勇に優を任すとして、聖はまず勝手口の大量の熊の肉をどうにかしなければならない。9尺はあろうかという大きさの熊だったのでそれなりに量がある。
『毛皮は後で洗うとして……肉か……』
内蔵はさっきの医者にでも売るとして肉をまず捌かなければいけない。
『ふぅ〜こんなもんかな。』
一刻程だったか、熊の肉は全て綺麗に切られていた。
今日の夕食は採ってきた山菜と熊の肉を使ったステーキのようなものにすることを決めた。随分と洋食を知っているように見えるが、1回だけ東京の浅草に行ったぐらいの知識である。なので勿論
『うわぁぁぁ……なんか蒸し焼きみたいなのができたや……』
こうなる。
天野家にはフライパンなどないので浅い鍋でやってみたら箸だとひっくり返せずくっつくから仕方なく水を入れたらこうなったらしい。
かく言う作者も料理が出来ないので何がどうだかよく分からない。
「ねぇ……なにこれ」
『……ごめん』
勇がこういうのも仕方がない。いつもなら完璧に作るはずの料理が意味のわからない熊の肉に変わっている。
「……まあ誰にでも失敗はあるだろうよ勇。
多方なれない洋食を作ろうとして失敗したんだろうよ。
……そう目で訴えるな聖……」
『だって!私の辞書に失敗なんて言葉ないもん!』
負けず嫌いの聖の性格が悪さをしている。父親が失敗と言う言葉を使ったのに対し腹を立てたのであろう。こうなれば手がつけられなくなる。