第1章 出会いと別れ
「うわああああああああ!!!!!」
「優!!!!!」
!?
『どうした!!!!!』
私は急いで山を駆け上がる。足元の蔦が邪魔だ。引っかかってしょうがない。
『優!!!!!』
「姉貴!!!!!優が熊に攫われた!あっちの方角だ!」
『なんだって!?』
どういうことだ!?ここは人の目がつきやすい場所だ!開けている。しかも麓の方だ。こんな下の方に熊が出たとしたら村の人が危ない!!!!!急げ!!!!!
『勇!!!!!すぐにこのことをお父さんへ伝えて!!!!!そして村のみんなにも熊が出たことを!!!!!』
「わかった姉貴!!!!!姉貴も気をつけろよ!!!!!」
『わかった!!!!!急がば回れだ!!!!!』
勇と私は急いで走り出す。
一刻も早く熊を見つけて優を助け出さないと!1度人を食べた熊は味を占めてしまう。そしてまた繰り返し人を襲うだろう。そんなことが起きては取り返しがつかない。絶対そんなことは俺がさせない。
『くっ……この匂い……巣穴が近い!!!!!』
別に俺が特別鼻がいいという訳では無いんだが、熊の匂いは独特で強いので多分誰にでも特徴を言ってしまえばわかるだろう。熊は尿臭い。ほんっとーに臭い。鼻が捩れてしまいそうな程に臭い。鼻が利く人ならおかしくなりそうだ。つくづく普通の嗅覚で良かったと思うよその点では。
『優!!!!!』
「お姉ちゃん……!!!!!」
熊がいた。優を口に咥えている。優の肩からは血が溢れている。まずい。血の味を覚えてしまった。
『優を放しやがれ!!!!!この熊野郎!!!!!』
「ク゛オ゛ア゛ア゛!!!!!」
熊が優を落とした。今だ!!!!!
ダッダッダッ
俺は熊の足元を掻い潜り優を安全な木の影へと避難させた。もちろん熊の心臓を一突きしてから。
だがまだ心臓を一突きした所ですぐには死にはしない。ある程度時間が必要だ。しかも刺されて気が立っているのかよりどう猛になったようにも見受けられる。
すかさず弓を放つが避けられ頭に当たった。
頭蓋骨はとても硬いので、マタギですら狙わない。攻撃の意味が無いのだ。
『チッ……矢を無駄にしてしまった。』
今度は木の上から首を狙う。
慌てずゆっくりと正確に、慎重に。
そして……
今だ!!!!!
ヒュンッ!!!!!
ものすごい勢いで聖が放った矢は熊の首の大動脈へと突き刺さった。