第1章 出会いと別れ
「お姉ちゃん!こっちこっち!」
今日は仕事が休みの日だったのでご飯を食べてすぐに優に連れられ私と勇は山へやってきた。山菜を取りに来たのだ。
「おい優!馬鹿か!そんなはしゃぐな!怪我するぞ!」
……乱暴な口調だけど優のこと心配してくれてるの……ほんとかわいい……
『うふふ。そんなにはしゃぐと怪我してお父さんに怒られちゃうよ。』
「うん、わかったよお姉ちゃん。」
「……なんで姉貴の言うことだけ聞くんだよ。」
まあ勇の言っていることはごもっともだが、弟たちが元気にはしゃいでる姿を見るのはこっちも気分がいい。いつも遊んでやれないからこうゆう時には甘やかしてあげたいものだ。
まあ勇は期待通りには行かないが、可愛いので許すとして、と。
そんなことを考えているうちに弟たちが大量の山菜を背負い籠に入れてゆく。
「姉ちゃん!これ!おっきいきのこ取れたんだよ!」
『ん?どれどれ……ってこれ松茸じゃん!今夜はご馳走よ!』
「まじかよ優!そんな大物どこで手に入れた!」
「えっとねあっちの木のとこにたくさん生えてた!」
「よっしゃじゃあめっちゃ取ってくるわ!ここで待ってろよ姉貴!」
『わかったよ!気をつけて取ってきてね!道に迷わないようにするんだよ!』
まさか優が松茸を見つけてくるなんて……私でもそんな簡単に見つけられないのに……才能かしら。
勇もはしゃぐほどの大きさの松茸なんて滅多にないのにね。6寸5分と言ったところかしら。
あんまりこの山にはアカマツは生えてないのにねぇ。よく見つけたものだわ。
『それにしても2人とも、どこまで行ったのかしら。』
2人が松茸を探しに行ってから幾分は経っている。
『迷ってないといいけど……最近人攫いも多いから怖いのよね。まあ一応護身用の小刀は勇には持たせてるから何かあっても取り敢えずは大丈夫だろうけど……いざとなったら弓を放たなきゃ。』
聖はある程度身を守るために武術を教え込まれている。剣道と弓道だ。なのでたまに狩りに行くこともあり、兎なども食卓に並ぶことがある。
もしものために小型の弓を組み立ててゆく。山へ出かける時には何時も常備してあるものだ。出来れば使うことがない方が良いのだが。