第1章 出会いと別れ
『……それにしてもあの人……なんだったんだろう。』
黒死牟について聖はよく考える。だがまだ分からない。鬼の存在について迷信としか思っていないからだ。
『ん〜……まあぼちぼち帰りますか。』
そう言い聖は帰路へと進む。
その頃鬼舞辻は聖の父と話をしていた。
「貴方のお子さん、優くんは特殊な血の系統にあります。」
「特殊な血の系統……とは?」
「ええ、特殊な血の系統とは、稀血というものです。
血には様々な種類系統があるのです。そしてあなたのお子さんの優くんはその中でも1等珍しい血の種類である……ということです。それを私たちは稀血……と呼んでおります。
そして優くんは熊に襲われ肩を食われたとおっしゃいましたよね。医者がもう大丈夫だと言うても血が止まらなければどうしようもありません。造血薬を使っても血が溢れ出る量が増えるだけ。」
「っ……それでは、どうすれば良いのでしょうか?」
「ええ、私は薬学に精通しておるのです。なので優くんの血を分けていただき、それを調べさせてほしいのです。」
「優の血をとめられる可能性があるなら……」
「ありがとうございます。では早速調べさせていただきます。」
そう言い鬼舞辻は客間に戻った。
「この子供の血は黒死牟が見つけた娘より相当薄いが……まあ腹の足しにはなるだろう。」
鬼舞辻は優の稀血を飲み干した。
「ふむ……若い人間は肉だけではなく稀血もより美味であるな。」
その時
ベベンッ
「無惨様。娘の稀血をお持ちしました。」
「おお、そうか。」
黒死牟がやってきて、鬼舞辻に聖の血を渡す。
「お前に褒美をやろう。」
「有難く存じます。」
鬼舞辻は黒死牟に新たに血を分けた。
ベベンッ
黒死牟は去った。
そして鬼舞辻は聖の稀血を飲んだ。途端に
「嗚呼……なんだこれは……底から力がみなぎるようだ……」
この聖の稀血は鬼舞辻にも効くようだった。
「……この娘の稀血……もっと欲しい……
……ならこうするしか他ないな。では早速実行に移すとしよう。」
そのころ優はまだ墓地から一里も離れていないところにいた。
『……?なんだろう……嫌な予感がする。』