第1章 出会いと別れ
「無惨様が探しておられる稀血……すぐそばにいなくても微かに香るな。匂いを辿るとしよう。」
黒死牟は稀血の匂いを辿り、ある墓地へ着いた。
そこには齢14程の娘がおり、何か墓に向かって話しかけていた。きっとその娘の家の墓だろう。
しかもなんとその娘から強い稀血の匂いがする。
黒死牟はその娘に気配を消し、近づいて行った。
だがあと二丁程というところで黒死牟の体に異変が起きた。
「なんだ……この感覚は……。酒に酔ったような……浮ついた気分だな……」
稀血の匂いにやられてこれ以上近づくことが出来なくなってしまった。これでは無惨様に報告できない。捕まえられない。
しかしだ、あの娘はかすり傷一つすらしていない。無傷だ。なのにここまでの匂いを放つとは……相当強い稀血だ……
ガサ……
しまった。
『誰!?』
黒死牟は咄嗟に身を隠した。
が、それも無意味だった。
『そこにいるのはわかってる。出てきて。』
……この娘……勘が鋭いようだな……そしてこの年齢でこの体の完成度……「縁壱のようだな……」
『「縁壱」……って誰?』
!?
私はそんなことを言ったか……!?
身に覚えはないぞ……無意識か……
「娘……お前の名はなんと言う……」
突然の質問に聖は驚くが、
『私は……天野聖。貴方は?』
「……黒死牟だ。」
『違う。源氏名じゃなくて貴方の本当の名前を聞いているの。』
!?……この娘……私が鬼だということを知っているのか……!?
「なぜ黒死牟という名を源氏名だと思った……」
『え?源氏名じゃないの?私てっきり……』
……鬼だとバレたわけではなかったか……驚いた。
「まぁいい。お前、稀血だろう。」
『「稀血」……?何それ』
「……血には種類系統があってだな、その中でも1等珍しく数も少ない血の種類のことを私たちは稀血と呼んでいる。」
黒死牟は事細かく稀血について教えた。
『はぇ〜……そんなものがあるんだ……じゃあ私は珍しい血の系統なの?』
「そういうことになる。ちなみにお前、弟が2人程いるだろう。」
『えっ?なんで知ってるの?』
「見れば……いや、私は役所の人間でな。個人の情報についてある程度は知っている。
そしてこの村では近頃人攫いが出ているという噂を聞いたので、ここへ来たのだ。」
『成程』
聖は意外と単純だった。