第5章 守りたいもの 錆兎
「まぁ、次は気を付けろな」
「うん…」
錆兎にそう言われたけれど、元はと言えば錆兎のせいじゃ…とは言えなかった。
「義勇も鬼殺隊入った頃はよく怪我してたよな」
「俺はもう怪我はしない」
「そういえば、義勇は今階級どこなの?」
この間、錆兎と階級の話になり、お互いの手の甲を見せ合ったのだ。
因みに私は『乙』錆兎は『甲』だ。
すると義勇は右手を握り、手の甲を上にして前に突き出す。
「階級を示せ」
義勇の手の甲に、ズズッと文字が浮かび上がる。
それは錆兎と同じ、“甲“だった。
「え⁈いつの間に⁈義勇っ、すごいね!錆兎と一緒だよ!」
「俺はやれば出来る」
「義勇、頑張ったな!偉いぞ!」
「おいやめろ錆兎、弟扱いするな」
錆兎は義勇の頭をわしゃわしゃと撫でまくった。
まるで兄が弟の頑張りを誉めるような、そんな姿に見えて、微笑ましく思った。
修行時代は私と同じようによく泣いてた義勇。
泣き虫な義勇は、もうここにはいなかった。
きっと、最終選別で錆兎に守られながら突破したあの7日間が、義勇をここまで成長させたんじゃないかと思う。
あの7日間を、義勇は悔いていたから。
それに比べて私は、こんな事で怪我して、何やってんだろ…
3年前も錆兎に助けてもらって、今日もここまで錆兎に連れて来てもらって…錆兎に甘えてばかりだな…
「はぁ…」とついため息が出てしまい、「どうした?」と錆兎が心配そうにしていた。
「ううん、何でもないけど…なんかね、錆兎も義勇もどんどん強くなってるのに、私はこんな所でどうしようもない怪我なんてして、弱っちいなって…もっと、頑張らないとなって思っただけだよ」
甘えてばかりじゃいられない。
もっと強くなって、先を歩く錆兎と肩を並べて歩けるようになりたいと、そう思った。