第5章 守りたいもの 錆兎
部屋に通され暫くすると、「失礼します」と見た目初老位のお医者様が現れた。
テキパキと処置を施しながらお医者様が私に告げる。
「軽い捻挫です。1週間程は無理をなさらないようにしてくださいね」
「分かりました」
その時、ガラガラっと屋敷の玄関が開き、パタパタと玄関に向かって廊下を急ぐ足跡が聞こえて来た。
『こちらへどうぞ』
どうやら別の隊士が泊まりに来たみたいだ。
「はい、終わりましたよ。お大事にしてくださいね。では、私はこれで失礼します」
「ありがとうございました」
私はお医者様にぺこっと頭を下げた。
お医者様はにこっと笑って私に会釈し、隣にいた錆兎にも軽く頭を下げて部屋を出るため襖を開けた。
襖が開かれた瞬間、ちょうど部屋の前を、先程到着した隊士が通り過ぎる。
チラッと見えたその姿に、思わず声を上げた。
「義勇!」
「⁈…… 紗夜、と…錆兎か」
名前を呼ばれた義勇は驚き、私達を見て更に驚いていた。
「…急に大声で呼ぶのはやめろ。心臓に悪い」
「びっくりした?ごめんね、えへへ」
「義勇もこの辺で任務だったのか」
「あぁ、一体倒して来た」
私達の様子を見て知り合いだと分かったのか、義勇の案内をしていた女将さんが、義勇と錆兎の部屋を一緒にするかと提案してくれた。
断る理由もないので二人はそれに頷く。
「では、この部屋の向かいのお部屋にお布団をご用意しますね。何かありましたら何なりとお申し付けください」
女将さんは一旦部屋を後にした。
義勇は私達のそばへ来て座ると、私の足に包帯が巻かれているのに気がついた。
「紗夜、怪我したのか…」
「あ、うん。ちょっとね…転んで足捻挫しちゃって、しかも鬼関係無く」
それを聞いて義勇は軽くガクッとした。
まぁ…そういう反応になるよね。
多分鬼だと思ってたんだよね。拍子抜けるよね。
私も言った後に恥ずかしくなってきたもん。
転んで捻挫とか、鬼殺隊士としてどうなのよ…