第10章 あなたの愛に包まれて*後編 中* 宇髄天元
アレもコレもと試着する度に、宇髄さんは「可愛い」と言い、挙げ句の果てには試着した物を全て買うと言い出す始末。
流石に全力でお断りした。
それでもどうしてもとお願いされて、それならと、宇髄さんが選んでくれた中から1着だけ私が選ぶ事に。
私も気に入ったし、元々宇髄さんが選んでくれていたものの中から選んだのだ。
これなら隣に並んでも恥ずかしくないかな。
試着したものを着たまま2人でお店を出る。
「デートですか?」とお店の人に聞かれ、そうだと応えると、荷物は後で取りに来て貰えば良いからと、デートを楽しんで来て下さいと快く送り出された。
なんて気前の良いお店なのか。
「それ、いいな。似合ってる」
「ホントですか?ありがとうございます」
さっき私が選んだのは、淡いミントに白い小花柄の可愛らしいワンピース。
宇髄さんが選んでくれたのはどれも可愛くて選び難かったけれど、これを見た時に、一番強く惹かれたのだ。
最近の私の服選びは、動き易さ重視。
一人で買い物に来ていたら、絶対に選ばなかった。
だからかな、これがいいなと思ったの。
可愛い服を着て、この人の隣に並んでみたいと思ったんだ。
「これすごく可愛いです」
「紗夜に似合うと思ってな。想像通り、可愛いな。マジで」
宇髄さんはそう言うと、私を見て優しく微笑む。
…服だ!服を褒められたんだよ!
今のは私にじゃないよと自分に言い聞かせる。
それでも可愛いと言われたら、ドキドキして舞い上がりそうだ。
「靴まで買ってもらっちゃって。すみません、それにバッグも」
「スニーカーじゃなぁ」と、ワンピースに合うようにアイボリーのショートブーツと、同じ色の小さめのショルダーバッグまで選んでもらった。
因みにコレ全部宇髄さんセレクト。
ホントにもう、センスが良過ぎる。
「いいのー、俺がそうしたかったんだよ。だから紗夜はなんも気にすることねぇから」
そう言って、宇髄さんは繋いだ手をまたきゅっと握って、私の手を引いて歩く。
きっと、私に負い目を感じさせないようにそう言ってくれたのだ。
ありがとう、宇髄さん。