第5章 守りたいもの 錆兎
暫く林の中を歩いてそこを抜けると、最初の雑木林の横の道に出た。
ずっと暗闇の中にいたせいか、淡い月明かりが眩しく感じられた。
「ここからなら…蝶屋敷より藤の家の方が近いな。紗夜、軽く走る。しっかり掴まってろ」
「分かった」
私は言われたとおりに、錆兎にぎゅっとしがみつく。
それを確認すると、錆兎はタッと走り始めた。
しがみついた錆兎の身体は、あの頃の少年らしさがなくなって、ずっと逞しくなっていた。
錆兎の背中、あったかくて安心するな…
このままずっと、触れていられたらいいのに…
そんな事を考えながら、私は錆兎の背中に全てを預けた。