第5章 守りたいもの 錆兎
本気で怖がる私に、耐えきれなかったのか錆兎は吹き出した。
「ブッ…ハハハ!ほんとに紗夜は昔から怖がりだなぁ」
「しょうがないじゃん!怖いものは怖いんだよ…」
「普段はどうしてるんだ?一人でこういう所も行くだろう」
「普段は…なずなを肩に乗せて、一緒に行ってるの…」
なずなは私の鎹鴉で、いつも怖がる私に「ショウガナイワネ!」と言いながらも一緒について来てくれる。
頼りになる私の相棒だ。
「ふーん、成る程な……」
「……何?」
錆兎は顎に手をかけ何か考え始める。
何だろう、何を言われるんだろう。
義勇にいつも「男なら!」って何か言ってる時あるけど、今日はあれかな?「女なら!」って言うのかな?
そんな事を考えていたら、
「よし!これで行こう」
考えが纏まったみたい。
何を言うのかなと構えていると、急に錆兎は私に向かって右手を出してきた。
「?」
ちょっとよく分からないので、取り敢えず私も右手を出してみる。
「そっちじゃ無い。左手だ」
え、左手?
分からないまま、言われるがまま左手を出すと、
「こうするんだ」
錆兎は私のその手をぎゅっと握った。
「これなら怖く無いだろ?」
そう言いながら、こちらに向けた錆兎の笑顔は、柔らかな、いつも私を安心させてくれる、温かい笑顔だった。
私の大好きな、優しい笑顔だ。