第5章 守りたいもの 錆兎
「そっか、錆兎かぁ。どこが好きなの?」
「どこがって…言わなきゃだめ?」
「えへへ、だめ?気になっちゃって。私は錆兎と義勇は一緒に育った兄弟みたいな感覚だし、恋愛対象にはならないから」
「私も、最初はそうだったんだけど…」
3年前だった。
一人で鬼と戦っている時、誤って鬼の攻撃を受けてしまった。
それ程強く無い鬼だと思って油断していた。
脚に数箇所深い切り傷ができて、痛くて動けなくなった。
動けなくなった私に、鬼が最後の攻撃だと襲い掛かってきて…
もうダメだ…
諦めて、眼を瞑った。
ーその時!
ザンッ…!
『ギャァッ‼︎』
鬼の悲鳴が聞こえて、恐る恐る目を開けて見ると…
『すまない、遅くなった』
『…錆兎…!』
夢かと思った。
目の前に颯爽と現れた錆兎に目頭が熱くなって…
今にも泣きそうな私に、錆兎が言った。
『大丈夫だ、お前は俺が必ず守る!』
私を背後に庇いながら戦うその背中が、
縋り付きたくなる程逞しくて…
今までお兄ちゃんとしか思っていなかったのに、
あの時から、一人の男の人として見るようになった。
錆兎を、異性として意識するようになった。