第5章 守りたいもの 錆兎
お会計を済ませ、店の外へ出たところへ、一羽の鎹鴉が私達の元へ飛んで来た。
義勇の鎹鴉、寛三郎だ。
今日もちょっとヨタヨタとしている。
「義勇…任務ジャ…」
「寛三郎、俺は何処へ行けばいい?」
「ココカラ東ニ向カッタ村ジャ…」
「分かった」
大丈夫かなぁ…
寛三郎はかなりの高齢鴉でよく指令を聞き間違える事がある。
義勇は寛三郎を信じて疑わないけれど、私、錆兎、真菰は少々不安を覚えた。
「じゃあ、俺は行く」
「お…おぉ。気を付けて行けよ、義勇」
「いってらっしゃい、義勇」
「ちょっと不安だけど」
「まっ…真菰!」
「?」
最後の真菰の言葉に義勇は首を傾げたけれど、飛び疲れた寛三郎を肩に乗せ、そのまま颯爽と走って行った。
東方面へ。
「行っちゃったね」
「東で、合ってるといいけどな…」
「あっ、また鴉来たよ!」
真菰が指差す方向から、もう一羽鎹鴉がやって来た。
錆兎の鎹鴉、龍若丸(たつわかまる)だ。
「錆兎!合同任務ダゼ!西ノ山ン中デ鬼ガ数体出タラシイ!数ハ分カラネェ!」
龍若丸は血の気の多い漢気溢れる若い鴉だった。
さっきの寛三郎の後だと凄く安心できる。
「分かった、西だな。因みに誰と合同任務なんだ?」
「義勇ダ!」
「「「……」」」
全員言葉を失った。
「錆兎、ドウシタ?」
「龍若丸、たった今義勇は東の村へ行ったんだ」
「ハァァ⁈ソリャ村田ッテ奴ノ任務ジャネーカ!アノジーチャンカラス何ヤッテンダ!錆兎!早ク義勇連レ戻セ!」
「真逆行ったな義勇!時間かかるぞ!またな、紗夜、真菰!」
「うん、頑張ってね錆兎!」
「行ってらっしゃ〜い」
錆兎は大慌てで義勇を連れ戻しに、東へ向かって全力で駆け出した。
錆兎が見えなくなるまで見送ると、真菰に腕をガシッと掴まれる。
「じゃ、私達はこのまま甘味屋さんに行こっか!」
「え?今食べたばっか…」
「甘い物は別腹だよ〜。女同士の話もしたいし、ね?」
話?いつもおしゃべりはしてるけど?と思ったが、断る理由もないので一緒に今度は甘味屋さんへ行く事になった。