第5章 守りたいもの 錆兎
いつもの定食屋さんに入り、4人掛けの席へ案内される。
私の向かいに錆兎、その隣に義勇、真菰は私の隣に座った。
席まで案内してくれた定食屋の女将さんが、いつものように私達の注文を取っていく。
「そっちのお兄さんは、いつもの鮭大根でいいのよね?」
義勇がこくりと頷いた。
「そっちのお姉さんは親子丼かな?」
「はい!お願いしま〜す」
真菰は元気良く返事をした。
「こっちのお兄さんとお姉さんは、何うどんにする?」
「俺はきつねうどんで。紗夜はどうする?」
「じゃあ…月見うどんでお願いします」
いつもと一緒なので「書くほどでも無いけど、一応ね?」と、女将さんが注文を確認しながら紙に書いていると、
「女将さん、だし巻き玉子追加で」
「はーい、だし巻き玉子ね。じゃあちょっと待っててね」
書き終えると、女将さんはそれを持って店の奥の厨房へ入って行った。
「錆兎、だし巻き玉子食べるの?」
「うどんだけだと腹にたまらないからな。それに、あれなら一緒に食べれるだろ?」
「え?」
「好きだろ?だし巻き玉子」
私も食べられるように、私の好きなもの頼んでくれたって事?
それ…結構嬉しいかも…
「うん、…好き」
私が返事をすると、錆兎は満足そうににこっと笑った。
やっぱり、錆兎の笑顔は…どきどきする…
「紗夜、どうした?顔が赤いが…」
「え⁈あ、なん…何でもないよ!」
うわ、恥ずかしい…
慌てて赤くなった自分の頬を手で隠した。
そんな私をにこにこと、いや、どちらかと言うとニヤニヤと、真菰は意味ありげな笑顔で見ていた。
「真菰…何?」
「ううん、何でもな〜い」
真菰はなんだかとても楽しそうだった。
錆兎は真菰の様子によく分からないと首を傾げる。
義勇はじっと静かに、私達の様子を見ていた。
「はーい、お待たせー!」
暫くすると、女将さんが注文した料理を運んで来てくれた。