第1章 ほんとの気持ち 冨岡義勇
「お断りしたんです」
「そう…なのか」
「実弥さんは私の中では頼れるお兄ちゃんで…、お兄ちゃんと恋仲になるっていうのがどうしても想像出来なくて」
「……」
………お兄ちゃん
これを聞いた時、不死川はどう思ったのだろうか。
何というか…この時ばかりは俺も心の中で不死川に同情してしまった。
「それに、ずっと前から心に決めている人がいて、…今日はその人にちゃんと言おうって思ってたんです。そしたら、その人は目の前で別の人と抱き合ってたから……失恋したんだって思いました」
「結果失恋はしてなかったですけどね?」と紗夜は微笑んだ。
それを聞いて俺は目を見開いた。
ここまで聞いて、流石に鈍いと言われる俺でも気付く。
紗夜は俺の事を想っていてくれたのか…
伝えるなら今だと、俺は紗夜を真っ直ぐ見つめる。
「紗夜、俺はお前が好きだ」
しばし固まる紗夜。そして…
「信じられない!」
「…は?」
「だって…私が実弥さんに返事しようとした時"俺には関係ない“って言ってどっか行っちゃうから、私の事やっぱり何とも思ってないのかなって…」
「それは…すまなかった」
だからあんなに悲しそうな顔をしていたのか。
申し訳ない事をしたと思った。
「不死川と仲が良さそうだったから、恋仲になるのだと思って…あの時俺も、失恋したと思ったんだ」
「えっ⁉︎」
今度は紗夜が目を丸くする。
「お前の気持ちも聞きたい」
「…好きです義勇さん、大好き!」
花が咲いた様な笑顔になる紗夜。
なんて可愛らしいのだろう。
俺も思わず口元が緩む。
……何か忘れてないか?