第1章 ほんとの気持ち 冨岡義勇
紗夜の後を追いかけ機能回復訓練の部屋に入ると、薬湯を浴びてびしょびしょの隊士が2、3人転がっていた。
「だぁぁぁー‼︎」
また1人、薬湯をぶっかけられ隊士が絶叫していた。
薬湯をぶっかけているのは紗夜だった。
「水柱様!どうかされましたか?」
神崎…だったか?が俺に声を掛けてきた。
「月城に用がある」
「分かりました。お待ちください」
神崎が声を掛けると、振り向いた紗夜はとても悲しそうな顔をしていた。
俺の胸がチクリと痛む。
「此方へどうぞ」と神崎に案内され、俺は紗夜の向かいに座った。
「… 紗夜」
「しのぶさん、置いてきていいんですか?」
「何故そう思う?」
「だって…抱き合ってたから…」
やはり盛大に勘違いをしている様だ。
「俺と胡蝶はお前が思っている様な関係ではない。さっきのは上から重いものが落ちてきたから庇っただけだ」
「…それだけ?」
「そうだ」
「……った」
最後の言葉は小さくて聞き取りづらかったが、「よかった」と、確かに聞こえた。
俺と胡蝶が恋仲でなくて良かったと、そういう意味だろうか。
そうだったらいいなと、そう思った。
「さっき、胡蝶に用事だったのか?」
「え?」
「だから診察室に来たんじゃないのか?」
「いえ…用事があったのは義勇さんです。伝えたい事があって…実弥さんとの事なんですけど」
不死川との事…
自分の気持ちをぶつけようとさっき決めたばかりなのだが、もしかしたらもう俺の入る余地は無くなってしまったのだろうか。
一体どうなったのか、いつになく緊張しながら俺は紗夜の言葉を待った。