第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
それから更に二週間。
今日も俺は昼休みに屋上に来ていた。
もう11月も後半だ。
年内はここに来るのもそろそろ終わりだな。
風が冷たくなって来ている。
……寒い。
オフィスの奥の休憩室にでも行くか、そんな事を考えていると、トントンと階段を登ってくる音が聞こえて来た。
キィ…と錆び付いた扉が開くと、ひょこっと月城が顔を覗かせた。
「伊黒くんみっけ!」
なんだそのみっけとか。
…可愛い。
にこにことやって来る月城に思わず俺の口元が綻ぶ。
「わぁ〜、あれから来てなかったけど寒くなったねー」
「もうしっかり冬だな」
「最初にここに来た時は紅葉が綺麗だったのになぁ」
「今度は雪が降るな」
「雪が降ってるの見るの、私結構好きだよ」
「俺は見てるだけで凍えそうだ」
「残念!一緒に見たかったのに!」
「せめて部屋から見させてくれ」
「じゃあ……今度雪が降ったら一緒に見よ?」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
月城はそんな俺を見て微笑んでいる。
「伊黒くん、私ちゃんと考えたよ。
今からこの前の返事、するね…」
こんなに、心臓がどきどきするなんて…
俺は月城の言葉を待った。
月城は一度大きく深呼吸すると、俺の眼を真っ直ぐ見ながらこう告げた。
「私、伊黒くんが好き‼︎」
月城の、素直な言葉が俺の耳にスッと入り込む。
胸がほんのり温かくなった。
嬉し過ぎて言葉が出ない。
かわりに俺は月城をぎゅっと抱きしめた。