第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
あれから一週間。
俺達はいつもと変わらず日々の業務をこなしている。
少し変わった事と言えば…
竹下が静かになった。
仕事ももう殆ど一人で出来るようになっていた。
元々やればちゃんと出来る奴だったようだが、色恋沙汰に現を抜かし過ぎて、仕事に身が入っていなかっただけのようだ。
初めからそうしてくれればよかったものを……
それから、
「胡蝶様!不死川様!お疲れ様でございます‼︎」
何故かこの2人の事だけ様付けで呼ぶようになった。
あの後居酒屋でこってり絞られたらしい。
余程恐ろしかったのだろう。
あの2人が激怒する所とか、想像しただけで背筋が凍る。
瀬田は竹下同様、胡蝶と不死川に怒られて反省したのか、あの後トボトボと1人帰って行ったらしい。
そんな瀬田の元へ一通の封筒が。
開けてみるとそれはあの居酒屋の衝立の弁償代の請求書だった。
実は胡蝶が居酒屋の店長に、請求先に瀬田の名前を書いたメモをこっそり渡しておいたのだ。
恐るべし胡蝶。
○万円の請求書に、瀬田はもう叫び出さずにはいられない。
「なんじゃこりゃぁーーーーー‼︎」
営業部のフロアに瀬田の大絶叫が響き渡った。
「今何か聞こえなかったか?」
「多分、衝立の請求書を見た瀬田さんの悲鳴でしょう」
「アレは俺がぶっ壊しちまったんだがなァ」
「良いんですよ。天罰だと思って、彼にはしっかり反省して頂きましょう。ふふふ…」
「「……」」
この時不死川と冨岡は思ったと言う。
“絶対胡蝶を怒らせてはいけない“と……