第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
暫くして頼んだビールが運ばれてきた。
「月城は何を呑んでいるんだ?」
「日本酒だよー。ここのオススメなんだって。あとで伊黒くんも呑もうよ、美味しいよ?」
「あぁ、俺もあとで頼む」
「うん!」
「楽しいねー」とお酒を飲む月城はにこにこと笑っており、この時間を楽しく過ごせているようで、俺は少しほっとした。
「そういえば、伊黒さん。さっき何を貰ったんですか?」
「あぁ、まだ見てなかったな」
すっかり忘れていたが、アイツは俺に何を渡したのだろう。
さっき鞄に突っ込んだものを探すべく、俺は自分の鞄を漁る。
パッと取り出しよく見てみれば、それは何処かのブランドの袋だった。
「割といいブランドですね。中身はなんですか?」
「……ハンカチだな」
「どういうつもりだァ?」
「日頃の感謝だとか言ってたな」
「感謝ですか…」
「伊黒、それ…」
暫く黙っていた冨岡も、自分の鞄から何か取り出した。
「俺も貰った」
「はァ⁈テメェなんで黙ってたんだよ!」
「冨岡さん、そういう事は早く言ってください!」
「…言うタイミングが分からなかった」
何故か胡蝶と不死川に物凄く怒られ、冨岡はしょぼくれていた。
「ねぇ、伊黒くん。そのハンカチちょっと見てもいい?」
「あぁ」
ハンカチを手渡すと、月城はそれを見ながら「同じだ…」と呟いた。
「どうした?」
「あ、ううん。何でもないの。ごめん、返すね」
「本当に、何でもないのか?」
「……実は…」
ヴー、ヴー、
月城の鞄に入っているスマホが鳴っているようだ。
取り出して見ると、またもやこの間と同じ様に表情が曇った。
「彼氏さんですか?」
「うん…なんか、来週も出張なんだって」
「今日も出張って言ってましたよね?最近多いですよね」
「そうだね…ちょっと変だよね…」
「紗夜さん…」
「私……騙されてるのかな……」
その言葉に、この場が少し重たい空気になる。
それは、ずっと1人で悩んで抱え込んで、やっと吐き出した言葉だったのだ。