第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
「はい、伊黒さん、これどおぞ!」
「これは?」
「日頃の感謝ですよぉ。受け取ってください!」
「……」
「貰っとけばいいんじゃないですか?」
胡蝶にそっと囁かれ、正直いらなかったが、まぁ貰えるもんなら貰っといてやるかとそれを受け取った。
「悪いな」
「いいえ!じゃ、私帰りますね!お疲れ様でしたぁ!」
竹下は満足そうに帰って行った。
「じゃぁ伊黒さん、私達先に行ってますね」
「あぁ、後で行く」
よく分からない貰い物を取り敢えず鞄に突っ込み、早く終わらせてしまおうと残りの仕事に取り掛かった。
残業に思いの外手こずった。
30分どころか1時間かかってしまうとは。
俺は急ぎめでこの間の居酒屋を目指した。
「おせーよ伊黒ォ!」
「悪い、思ったより時間かかった」
「取り敢えず、ビールでいいか?」
「あぁ冨岡、よろしく頼む」
「伊黒さんお疲れ様です。そうそう冨岡さん、“取り敢えずビールで“っていうのは、最近の若い子達は使わないみたいですよ?」
「胡蝶は俺がおじさんだと言いたいのか?」
「そこまでは言ってないですよ?」
「俺がおじさんだと、胡蝶も自動的におばさんになってしまうが」
「まぁ!失礼しちゃいますね。私はまだピチピチの27歳です」
「俺だってまだピチピチの27歳だ」
「オイ!テメェら痴話喧嘩は他所でやれェ!ピチピチ言ってんじゃねェ!後なァ、ピチピチが使えんのは10代までだァ‼︎」
「うるさいぞ貴様ら。どうでもいい、もっと27歳らしい会話をしろ。あと早くビール頼んでくれ…」
「あはは!楽しい!」