第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
会議が終わると、俺はオフィスへは戻らず、営業部やら製造部へ顔を出しに行った。
まぁ、ちょっとした野暮用だ。
製造部には一緒に入社した同期も何人かいて、つい雑談してしまい、気付いたら定時をとっくに過ぎていた。
戻ってみれば、そこには机に突っ伏した冨岡と、それを憐れむ3人が目に飛び込んできた。
「……これは?」
「大分メンタルが削られた冨岡さんです」
「冨岡くん!しっかりー!」
「……俺は…もうダメだ…」
「しょうがねぇなァ。よし、久々に飲みにでも行くかァ」
「あ、いいですねぇ。明日はお休みですし」
「オイ冨岡ァ、行くぞォ。鮭大根のある店連れてってやっからよォ」
鮭大根に反応したのか、それまで屍の様だった冨岡がムクリと起き上がった。
「……行く」
「では、皆で行きましょうか」
今日は金曜日、明日は休みだからと時間は気にせずガッツリ飲んだ。
終電を逃した胡蝶、冨岡、不死川はタクシーで帰る事に。
殆ど寝かけている冨岡を「世話の焼けるヤツだなァ!」と言いながら、不死川がタクシーへぎゅっと押し込み、胡蝶と不死川も一緒に乗り込むと、3人を乗せたタクシーは夜の闇へ消えていった。
残った徒歩組の俺と月城は、酔いを醒ますようにゆっくりと家まで歩いた。