第3章 君の笑顔が好きだから 煉獄杏寿郎
仔猫を探し、3人家の周りを駆け回る。
早く見つけなければ。
お預かりしている猫だ。
ごめんなさいでは済まされないのだ。
「むぅ…何処へ行ってしまったのだろう」
すると、背後から聞き覚えのある声が…
「杏寿郎さん?」
「紗夜⁈」
よもや!こんなに早く帰って来るとは。
「お茶してくる」と出掛けてからまだ半刻も経っていない。
今日は暫く顔が見れないと思っていたところへ不意を突かれ、俺の鼓動がトクンと跳ねた。
「紗夜!どうした!早いな!」
「蜜璃ちゃんに緊急指令が入ったので、途中で帰ってきたんです。で、今玄関でただいまって言ったんだけど誰も出て来なくて……ちょっと寂しくて探しに来ちゃいました!」
そう言って紗夜は笑ってみせた。
紗夜は寂しがり屋だ。
それは紗夜が煉獄家へ来た頃からよく知っている。
本当はちょっとではなくて、うんと寂しかったのではないだろうか。
俺が気にしないように、こんなのへっちゃらだと無理して笑っているように見える。
俺の前では無理しなくていいのに。
もっと我儘だっていいのに。
君にそんな顔をさせてしまって、切なくなった。
「そうか、出迎えてやれなくてすまなかった!」
俺は紗夜の頭をよしよしと撫でてやる。
「おかえり、紗夜」
「ただいま、杏寿郎さん」
紗夜はパァッと明るい笑顔になった。
釣られて俺も、口元が緩む。
やっぱり俺は、君の笑顔が一番好きだ。