第3章 君の笑顔が好きだから 煉獄杏寿郎
「仕方ない。紗夜が帰って来るまで暫く待つか」
父上が仔猫の入っている籠を縁側にそっと降ろし、その横に胡座をかいて座る。
俺と千寿郎も側まで行き腰を下ろした。
今日は気持ちの良い天気だ。
フッと感じるそよ風に心が和む。
親子3人猫を囲んで座っているなんて滅多にない。
この光景を見たら紗夜は何と言うだろうか。
いつもみたいに、太陽のような明るい笑顔で笑うのだろうな。
俺の一番好きな笑顔で…
そんな事を考えていると、急に仔猫がモゾモゾと動き出した。
む?起きたか。
仔猫の様子に父上も千寿郎も気付いたようで、皆で揃って覗き込んだ。
今思えば、これがいけなかったのだ。
ぱちっと目を開けた仔猫。
くりっと大きな瞳で覗き込んでいる俺達を見上げる。
すると突然……
「み"ゃぁ“ぁ"ぁ"ーーー‼︎」
「「「⁈‼︎」」」
その可愛らしい様子から全く想像できない程ドスの効いた鳴き声で威嚇してきたのだ。
猫側からすればそれはそれは驚いただろう。
目が覚めたら知らない人間の顔が3つ、そこにあったのだから。
「これはいかん!少し離れるぞ!」
俺達がパッと後ろへ下がったその瞬間…
ーダッ!
「ああっ父上!仔猫が逃げて行きます!」
「不味いぞ!杏寿郎!千寿郎!追いかけるんだ!」
「「はい!」」
まさか炎柱が自宅の庭で猫を追いかけ回しているなんて…誰が想像できただろうか。
しかし、猫というのは意外と足が速いのだな!
あっという間に見失ってしまったぞ!
よもやよもやだな!