第3章 君の笑顔が好きだから 煉獄杏寿郎
父上が、ご近所さんから猫を預かる事になった。
「うわぁっ、兄上見てくださいっ。かわいいですねっ」
「うむ!可愛らしいな!」
「…杏寿郎、声の音量を下げなさい。猫が起きるぞ」
「むっ!…申し訳ない…」
預かった猫はまだ子猫で、白く小さくふわふわとしていて、まるで綿あめのようだ。
「父上、明日の夕方まで預かるのですよね?」
「あぁ、そうだ。急な用事で家を空けなければならなくなったらしい。明日の夕方には迎えに来るそうだ」
「では、それまで俺達でしっかり面倒を見ましょう!」
「それなんだが…お前達、猫の世話の仕方は分かるか?」
「「分かりません‼︎」」
俺と千寿郎は声を揃えて返事をする。
煉獄家で猫を飼ったことは俺の記憶違いでなければ一度もない。
正直に言えば、触った事すらなく、今目の前で眠っている仔猫にどう触れていいものか、内心戸惑っている。
「あー、そうだろうな。俺も分からん。時に杏寿郎。紗夜は今何処にいる?」
「紗夜ですか?今日は甘露寺とお茶をして来ると出掛けています」
「そうか、紗夜なら色々知ってると思うんだが…」
「あぁ!甘露寺さんがまだここにいる頃、お二人で猫の話をなさっていましたね!」
紗夜は、炎の呼吸の使い手で俺の継子だ。
甘露寺より後に入隊し、ここで2人一緒に鍛練していた。今は甘露寺が恋柱になりここを出たので、継子として俺が紗夜の面倒を見ている。
そして、紗夜は…俺の想い人でもあるのだ。