第2章 幸せのカタチ 不死川実弥
「スゥ…ハー…」
一度深く息を吐いてから、不死川さんの大きなお屋敷の玄関の戸を叩く。
トントン
「ごめんくださーい!」
しーん…
あれ、居ないかな。
もう一度。
トントン
「ごめんくださーい‼︎」
「今出ます!」
あ、居た。
奥から声が聞こえた。
声を聞いただけで鼓動がトクンと跳ねる。
私が来るなんて思ってもいないだろうな。
郵便か何かだと思っているのか普通に出ようとしている。
ガラガラッ
目の前で戸が開かれ、
「しなず…」
ガラガラ…トン……ガコン
言い終わらない内に戸が閉まる。
ご丁寧につっかえ棒まで。
酷くない?
「不死川さん!」
「なんでここにお前がいる」
「甘露寺さんにお家教えてもらいました。あ、あと伊黒さんにも」
「チッ、アイツら…今度会ったらタダじゃおかねェ」
とても物騒な事言ってます。
甘露寺さん、伊黒さんごめんなさい。
「何しに来た」
「不死川さんに会いに来ました」
「俺はもう会わねェ」
「私は会いたいです。ここ開けてください」
「開けねェ」
「不死川さん、私にはもう会いたくないって事ですか?」
「………会いたくねェ」
今、少し間があった気がする。
そう思いたいだけなのだけれど、会いたくねェは、不死川さんの本心ではない、そんな気がした。
「理由を教えてください。どうして…私から離れたんですか?」
暫く沈黙が続き、ようやく不死川さんが話し始めた。
「…鬼殺隊にいる以上、いつ死ぬか分からねェ。こんな死と隣り合わせで戦ってるヤツなんかより、もっといいヤツんとこ行った方がいいだろォ」
私の為を思ってって事ですか?
自分が死んだら私1人残してしまうって思ったからですか?
人の事ばかり考えて…
なんでそんなに、優しいんですか…
すぐそこに不死川さんがいるのに…
目の前にあるこの一枚の扉が邪魔をする。