第2章 幸せのカタチ 不死川実弥
「オイ、月城ォ」
不意に名前を呼ばれる。
「帰れェ」
それは今まで聞いた中で一番冷たかった。
心が折れそうだった。
でも私はめげない。
ここまで来たんだもん。
不死川さんに会えるまで、頑張るんだ!
「帰りません」
「帰れっつってんだろォ!」
「嫌です!」
「おまっ…いい加減にしろォ!」
こんなに怒鳴られたのは初めてで、目にじわっと涙が浮かんでくる。
本当に会う気がないみたいだった。
それなら、ここで思ってる事全部言ってやる!
私はありったけの思いを言葉に乗せて叫んだ。
少しでもこの思いが不死川さんに届くように…
「聞いてください!
不死川さんは優しいから、色々考えて、私のためにって思って身を引いたんですよね⁈
でも、違うの!
嬉しくない!
あなたに会えなくなってから、私は胸が苦しいです!
もし仮に、私が1人残ることになっても…
それはもう覚悟の上です!
だったらその分たくさん思い出作りたい!
あなたの隣で笑っていたい、その時まで!
もしも、この先あなたの要望通りにあなた以外の人と一緒になったとしても、私は幸せになんてなれません!
だって…あなたを思って他の人と一緒になる方が…私は絶対後悔するから!
不死川さんが思う幸せって何ですか⁈
あなたといられないのなら、そこに私の幸せはありません!
一緒にいたいのっ…不死川さん…‼︎」
それでも、目の前の戸は開かなかった。
私はその場にへたり込む。
目の前がボヤけていく。
涙が溜まっていたからだ。
俯いたら、ぽたりぽたりと涙が落ちた。
落ちた涙は着物に吸われ、涙の染みをつくった。