第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
休日ということもあってか、街中は人で溢れていた。
もう何年ぶりだろうここへ来るのは。
奏真が産まれる前、その前から来るのをやめていたから、6年ぶりかな。
久しぶりに来た街中は、変わらないところもあるけれど、すっかりお店が新しくなっているところもあって、なんだか新鮮だった。
キョロキョロと私が周りを見回していると、
「…ぷっ、どうした?」
宇髄さんが可笑しそうに、笑いを堪えながら私に尋ねてきた。
怪しかったかな、恥ずかしい…。
「…もうずーっと前ですけど、前に来た時よりもお店が増えてて。色んな所が新しくなってて、見てるだけでもう楽しいです」
「そりゃ良かった。でもせっかく来たんだ。見てるだけなんてつまんねぇだろ。行きたいトコあったら言えよ?俺が連れてってやっから。な?」
そう言って、にこりと笑う宇髄さん。
こんな笑顔を向けられると、今日は何言っても許してもらえそうだなぁとか思ってしまう。
そもそも許してもらえなかったことはないのだけれど。
だって宇髄さんは元々優しいのだ。
「はい!」
そういえば、宇髄さんの行きたい所はどこなんだろう。
なんとなく歩いているけれど、今そこへ向かっているのかな?
聞いてみようか…などと考えながら、ふと何気なく視界に入ったショーウィンドウに映った自分の姿。
…。
なんだこれ!!?
「宇髄さん!」
「ぅおっ⁈」
私は慌てて私の手を引く宇髄さんを思いっきり引っ張って止めさせた。
「なんだ⁈」
「やっぱり私…帰ります!」
「・・・はっ?!」
突拍子もない私の発言に困惑する宇髄さん。
ここまで来といてそりゃねぇだろと顔に書いてある。
私もそう思う。
でもこれではダメなのだ。
だって…
「だって、今日の私…、全然気合いが入ってません!」
「…」
唖然とする宇髄さん。
また私、変なことを言ったかな…。