第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
「それだけで、いいんですか?」
「ん。行きたいとこ行って、お前が楽しめれば俺も楽しい。一緒にいられれば俺は嬉しいし、それだけで幸せだ」
嬉しいし、幸せ。
そんな風に言ってもらえて、私はなんて幸せ者なんだ。
こんな気持ちにさせてもらって、これじゃあどっちが誕生日なのか分からないや。
「あげます、私の時間。目一杯もらってください」
「じゃ、遠慮なく」
嬉しそうな顔と共に、ちゅっと頬にキスをされた。
「わっ…」
外なのに、と真っ赤な顔でキスをされた頬を片手で隠すと、
「こっちのがよかった?」
宇髄さんは人差し指で私の唇をふにっと押した。
それはもっと恥ずかしい!
慌てて口元も隠してぶんぶんと首を振る。
「っはは、可愛なホント」
そんなことを言いながらまたぎゅうっと抱きしめられる。
今日は朝から何度こうされているのか。
なんか、私の方が幸せではないですか、宇髄さん。
満足したのかパッと腕を緩めると、
「よし、行くか」
私の手を取り指を絡める。
凄く自然な流れで手を繋いだ。
わぁ…、デートみたい…。
…。
違う違う!
みたいじゃなくってほんとにデートなんだってば!
あったかくて、私より大きな手。
すっぽりと包まれてるみたいで、これだけで安心出来る。
きゅっと握ってみたら、お返しに握り返してくれた。
嬉しくて宇髄さんの方を見上げたら、私を見つめる優しい瞳とぶつかった。
今日1日こうやって手を繋いで一緒にいられるんだ。
浮かれちゃうな。
宇髄さんとの初めてのデートに顔がニヤけそうになるのを必死で堪えながら、仲良く手を繋いで街中を歩き始めた。