第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
「あーもうマジで離れらんねぇよ?俺」
「ふふ、離れなくてもいいですよ。…今は離してくださいね?」
出来ればこのままぎゅってしていたい。
でも忘れちゃいけないここは外。
もう直ぐ街中へ入る一歩手前。
車も人通りも段々と多くなる。
そんな所でこんなことしていれば、ほら。
道行く人が振り返る。
周りの視線が、刺さる刺さる…。
「嫌だ」
「え"っ!皆こっち見てますよ⁈」
「いいじゃねぇの。俺らのラブラブ見せ付けようぜ」
「何言ってんですか!そろそろ恥ずかしいですっ!」
宇髄さんの胸の辺りを少し強めに押しやると、観念したのか渋々腕を緩めた。
…と思いきや。
そのままこつんとおでこを合わせられた。
緩められた腕も未だ背中に回ったまま。
こんなに近くで見つめられて、顔中に一気に熱が集まる。
「真っ赤だな」
「かっ、揶揄わないでくださいっ」
「揶揄ってねぇ。かわい」
「〜〜っ!」
恥ずかしくて顔から火が出そうだよ!
そんな私をよそに、宇髄さんはそのまま話し出した。
「なぁ、プレゼント…物はいらねぇから。その代わり、今日1日紗夜の時間を俺にくれねぇ?」
「私の、時間?」
「俺の行きたいとこ行って、したいことして。お前も行きたいとこあったらちゃんと言えよ?今日1日一緒に過ごしたい」
そんなのお安いご用です。
でも、そんな普通のことでいいのかな。
一緒にいるだけじゃ、私何にもしてあげられないような…。