第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
不死川夫婦に笑顔で見送られ、家を出た。
(本当は、不死川さんは私には笑顔だったけど、宇髄さんにはこれでもかってぐらい怖いお顔を向けていた。)
本当に、良かったのかな。
正直言うと、今かなり嬉しい。
宇髄さんと二人きりで出掛けるなんて、ほぼ無いんじゃないかと思ってたから。
でもこうするために子どもを人様に預けてしまったこと、これってほんとに良かったのかな…とつい考えてしまう。
少しの罪悪感が、胸にチクリと刺さる。
「紗夜」
「はい?」
「やっぱ…、嫌だったか?」
「え?そんなことないですよ!どうしてですか?」
「浮かない顔してる」
「あ…」
気付かぬうちに顔に出てしまったのか。
どうしよう…。
折角連れ出してくれたのに、こんなこと考えてるなんて知ったら宇髄さんどう思うかな。
でも宇髄さんにこんな心配顔させてしまって、こっちも罪悪感。
だって、さっきまでニコニコだったから。
「また余計なコトでも考えてたろ」
そう言いながら宇髄さんは私のほっぺたをフニフニと指でつつき始めた。
「あのっ…、ちょっ…」
この流れはなんだか…
このまま黙ってたらまたさっきみたいになってしまいそう。
ここは変に誤魔化すより言ってしまった方がいいかな。
「奏真を預けてしまってよかったかなーって。ご迷惑でなければいいんですけど…」
素直に思っていることを言うと、宇髄さんはちょっと考えて、
「んー…。ま、いんじゃねぇ?」
あっけらかんと言い放った。
そんな簡単に…。
私は罪悪感でいっぱいだというのに。
「いや、テキトーに言ったんじゃねぇのよ?あれだ、交換条件」
「え?」
「今日は奏真を預かってもらう。その代わり、不死川んトコが出掛けることになったら今度はウチで爽弥を預かる。つうことで今日の話受けてもらった。だからそんな顔すんな」
「まぁ不死川んトコはもちっと先になると思うけど」と言いながら宇髄さんは私の頭をよしよしと撫でてくれる。
そっか、そういうことなら納得だ。
今聞いた話と宇髄さんのよしよしで、私の中で燻っていた罪悪感は、スッとキレイに消えてしまった。