第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
「テメェマジでしばくぞこのクソがァ!」
遂に不死川さんは爆発した。
「おーこわ」
そう言って宇髄さんは更に私を抱きしめる。
逆効果ですってば宇髄さん。
「もぉ実弥くんてば、子どもの前でそんな物騒な言葉使っちゃダメでしょ!いいじゃないハグくらい。ラブラブってことよ」
改めて言われると、なんと恥ずかしいことか。
葉月さんにピシャリと言われ、「チッ、分かったよォ」とあんなに青筋を立てていた不死川さんの怒りはスッと治まったようだ。
やっぱり奥さんの言葉は響くのかな。
「らぶらぶってなぁに?」
「仲良しってことよ」
「なかよし?よかったねー」
「ねー」と仲良く相槌を打つ二人。
奏真が…、まだ覚えなくてもいい新しい言葉を覚えてしまった。
こうやって、大人の階段を上っていくのかしら…。
少々複雑な思いで奏真のこれからの成長を考えていると、
「あ、そうそう。お昼はオムライスにしようかなって思ってるんだけどね。奏真くんアレルギーとかはないかしら?」
「はい、大丈夫です!お昼ご飯私もお手伝いしますね」
「ううん、大丈夫よ?実弥くんもいるし。というか、これから二人で出掛けるのよね?」
「・・・?」
私の頭の上にハテナが浮かぶ。
二人で出掛ける?
今日は不死川さんのお家に皆でお邪魔する日じゃなかったのか?
どういうことだと未だ私を離さない宇髄さんを見上げてみると…
まるでイタズラが成功したかのような顔で嬉しそうに笑う宇髄さん。
「…出掛けるの?」
「そ」
「二人で?」
「そ」
ということは…
何にも聞いてないけれど、もうこれしか思いつかないよ。
予想が外れていないことを願って、私は辿り着いた答えを口にした。
「…デート?」
「大正解」
宇髄さんは、すこぶる嬉しそうに破顔した。