第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
「宇髄さんは、いつがいいですか?」
「俺はお前の好きな日でいい」
「え、でも…いいんですか?私が決めちゃって」
「いいんだよ。俺は紗夜が一番なの。紗夜の気持ちが最優先。だから、紗夜の一番いいと思った日が俺の一番いい日。分かったか?」
何だか強引な気もするけれど…。
でも、私が一番だと言ってくれたことが、堪らなく嬉しかったり。
では、お言葉に甘えて…
「じゃあ、……11月22日がいいです」
「お、いい夫婦の日?ベタなトコ来たな」
「それもあるんですけど、実はその日……、私の誕生日なんです」
言ってしまった。
これじゃあまるで祝ってくださいって言ってるようなもんだよね。
だからと言ってずっと黙ってていつの間にか過ぎてしまうのもそれはそれでおかしい気も…。
あぁー…どうすれば良かったんだろ…
「マジか…」
宇髄さんは、呆気に取られたような顔で私を見ていた。
わざわざ自分の誕生日にするとか、主張し過ぎ?
もしかして、…引いた、かな?
「すみません、変ですよね。自分の誕生日にしちゃうとか。やっぱり別の日に「変じゃねぇよ」
「え?」
「変じゃねぇっつったの。誕生日が結婚記念日なんだろ?いいじゃねぇか、派手に最高だ」
そう言って宇髄さんはにっこりと笑ってみせた。
良かった、変じゃないって言ってもらえて。
宇髄さんがこうやって笑ってくれると、私は心から安心できる。
何にも気にするな、心配するなって言ってくれているような気がするから。
「そうすっと大体一ヶ月後だな。つぅことは色々早くしねぇと…。なら明日にでも市役所行ってくっか」
と、宇髄さんは急に真面目な顔で何やらブツブツと呟きながら考え始めた。
一ヶ月後?市役所?
それって…
「宇髄さん」
「んー?」
「もしかして、なんですけど。…来月の22日に出しに行こうとしてます?…婚姻届」
「おー。…ん?違った?」
「違う、と言うか…いえ、むしろ嬉しいです!だけれども…」
そんなに早く宇髄さんのお嫁さんになれるなんて、本当は舞い上がるくらい嬉しい。
けれど、これでほんとにいいのかな…と、
私は先日宇髄さんが言っていたことを思い出していた。